Craftsman Interview #1

注染が好きだから、
注染でどこまでできるかがやりたいんです

あひろ屋 野口 由

失敗覚悟のチャレンジ

─────友禅染めの技術が手ぬぐいの製作に生かされていることはありますか?

技術的には特にないんじゃないかな? ただ友禅の浸透というかじわーっと染みていく描き方が自分はすごく好きで。注染が好き、というのはそういうぼかした感じ、柔らかい優しげな感じが好き、というところから来ているかもしれないです。
でも、注染は友禅みたいに神経を行き届かせるようなことができないので、そこは割りきるしかない。ドバーッとダイナミックに染めてもきれいなぼかしができる、というところが注染の醍醐味ですね。

─────不確定な染めの作業を人に託すのは勇気がいるでしょう?

厳密に「こうじゃなきゃいけない」と考えると注染は難しくなっちゃうので、いろんなふうに出来上がるということを楽しみつつ、受け入れることができなければ続けられないでしょうね。
手ぬぐいの製作というのは問屋さんを通すのが普通で、そのメリットはといえば、失敗が少ないんです。版下の柄を見て、適切な染め屋さんに割り振ってくれたり、「ここはムラになりやすいよ」「もうちょっとこうしたら」とアドバイスをもらえたり。
私の場合、あえて失敗しやすいことをお願いしちゃっている部分もあるから、実際に染めている人と直接話をして「ここはどうしてこうなったのか」を教えてもらって勉強したかった。なので、問屋さんを通そうと考えたことは一度もありません。
自分が使っていて「これはいい」と思った手ぬぐいがあると、どこで染めているのか調べまくって直接アタック。そんなふうに染め屋さんを開拓していきました。

─────では、染め屋さんとのおつきあいにも変遷がある?

いろいろあります。「色合いがここまでしか出せない。絶対無理」と言われてそんなはずないのに、と思いが残ると続いていかないし、「これでも綺麗にやったほうだけど」と言われてこれじゃぁなぁ〜ということも。
でも、技術的にどうこうというわけではなく相性みたいなものもあります。
染める方からすれば失敗したくないじゃないですか。なるべく危険なことはしたくないし、やったことのないことはやりたくない。うちのは大変なのが多いから、嫌だろうなぁとは思いますけど(笑)、楽しんでくださる職人さんもいます。
今、お願いしている2軒は私のチャレンジを引き受けてくれて、素晴らしい手ぬぐいを作ってくれて本当にありがたいです。

─────つまり、注染の技法の中でできることをするのではなく、自分のやりたいことをめざす?

もちろん伝統的な注染の技法に則ることは大事なんですけど、注染でできるものを考えることが先じゃないから。
こういう地色でこういうことがやりたい、とまず考えて「はて?できるのかな?」と。そこからどうやって注染の技法にすりよせていけるのかを考える。染め屋さんが尻込みしても「失敗してもいいのでやってみてください」と失敗覚悟でお願いするんです。

─────ご自身は失敗は怖くないんですか? 失敗のリスクって大きいでしょう?

どこまでやったら失敗するかがわからないから、まずはチャレンジしてみる。
一度に十反ですから「特岡」という生地なら約125枚、二色だったら約250枚が上がってきます。それで大失敗、お蔵入りというものもあります…。
でも、その失敗例も大事で、ああやったらこうなっちゃった、という経験がその次に生きてくる。
失敗しても結構楽しい。探して探してお願いした職人さんに託しているので、変な失敗はないし、すごく工夫してくれた挙句にこうなっちゃったんだ、というのがわかると納得できるから、がっかり感はないんです。
たとえば手捺染だったらひょっとすると自分のやりたいことが実現できるかもしれませんが、それだったらやらなくてもいいかな、と。注染が好きだから、注染でどこまでできるかがやりたいんです。

─────うわぁー、かっこいい!

注染で一体どこまで、どんな手ぬぐいができるのかを毎回私自身が楽しみにしているんです。痛い目に遭いながらも、この仕事を始めて十年くらい経って、どこまでの細さだったら染められるのか、どこまでやればムラになるのか、がようやくわかってきました。
十年もかかって失敗し続けるっていうのもすごいですよね(笑)。でも、 そういう挑戦と失敗があるからこそ、うまくいったときは嬉しくて。注染って本当にすごいな、面白いなって思います。
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