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弥生 さくら餅
台処歳時記
かおりが身上、葉ごと食べたいさくら餅
 春一番が、温もった花の香りを吹き散らす。こんな日は、庭木の多い小道をあるくとおもしろい。きのうまで気付かなかった沈丁花も水仙も、競うように匂いを放ち、しかと在り処を教えてくれる。見あげればまた梅の花。あじさいのやわらかな新芽もあざやかだ。

 春のかおりをいっぱいに吸いこむと、なぜだか決まって食べたくなるのがさくら餅。和菓子屋では新春からはやばやと、墨で書いた張り紙が気を惹くけれど、元来は花の季節のものだろう。関東では焼皮で餡をくるみ、ほかの土地では、ぶつぶつした道明寺粉が一般らしい。

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大きさで分けて束ねて漬けられる
 関東風のはじまりは、隅田川沿いの向島、さくらで知られた長命寺。江戸の時代に掃いても積る葉っぱに困った寺番が、塩漬けにして餅を包んで売ってみたのが最初とか。桜は消えたが、餅は今でも名物だ。

 一方の道明寺粉は、もち米を蒸して乾かし、細かく挽いた干飯(糒)で、こちらの起源は大阪は藤井寺の道明寺。千年ものむかし、九州に追いやられた菅原道真公の叔母にあたる尼僧が、甥の無事を祈って供えたご飯を干して参拝者に配ったものが、病に効くと広まった。このお寺では、本物の道明寺粉が手に入る。

 中身はともあれ決め手の香りは塩漬けのさくらの葉。鏝絵やなまこ壁でも知られる港町、伊豆の松崎でとれる大島桜が有名だ。川沿いの桜並木は眺めも見事、葉は樽に浸け、半年から1年半も寝かせてようやく出来上がる。

 田舎育ちの私には、さくら餅といえば道明寺。いちど蒸してある道明寺粉を使えば案外かんたんなので、花見の席や手土産に手づくりするのも一興だ。

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もち米は芯がなくなるまで蒸して蜜を吸わせる
台処歳時記
餡がやわらかすぎる場合は、火にかけて水気をとばす
 10コ分で道明寺粉120gに水180mlを加えてよく混ぜ、ラップをかけて500wのレンジで5分。乾いた布巾をかけて10分蒸らし、さとう大匙2と好みで紅粉を混ぜて10等分する。250gの餡も10等分しておいて、餅でくるみ、水にさらして塩抜きした桜の葉で巻けばできあがり。

 手間はかかるが、もち米から作ってもいい。一晩水に浸けたもち米100gを布巾に包んですりこぎで叩き、米粒を2分の1から4分の1ほどに砕いたら、こねるようにぎゅうぎゅう揉んでぽろぽろにする。うっぷん晴らしにもってこいだが、ミキサーを使ってもよい。布巾へ平らにのせて、強火の蒸し器で30分蒸しあげ、上白糖40gと紅粉を水100mlで煮立てたところに混ぜあわせ、濡れ布巾をかぶせて15分。あとの手順は同様だ。

 口当りは遜色ないが、もち米は硬くなりやすい。道明寺粉ならぴっちり包めば2、3日はやわらかい。粒の大きさもいろいろあるので、お好みのぶつぶつ感を楽しもう。
 試みに白餡もくるんでみたが、葉っぱの香りに負けてしまった。たわわな花を咲かせる桜、葉の一枚から春たちこめる、花見どきの菓子である。






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