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卯月 わけぎのぬた
台処歳時記
春はやっぱり赤貝で
 梅の枝は花を終って若芽を伸ばし、桜はいっそうみごとに咲いて、容赦のない春風に花びらをまき散らす。春一番にはじまって、四月の風は手加減というのがなくて、花の吹雪はいいけれど、干したばかりの洗濯物やら布団やら、なんでもかんでも吹っ飛ばすのが憎らしい。埃まじりで荒々しいが、肌を刺す冷たさはもうなくなって、どことなくぬくみがこもる。

 あたたかくなるにつれ、お膳になにか酢の物がほしくなる。わけてもちょっと芥子のきいた酢味噌和え、ぬたなんかはいいものだ。わけぎやあさつきが旬をむかえて、赤貝やとり貝などとあわせれば、見た目もよくて春先の酒の肴にちょうどいい。わけぎの芯のぬめりのところがピュっと飛び出るところをいうのか、京都のほうでは鉄砲あえともいうらしい。物騒な呼び名に似合わずいかにも乙な鉢物だ。

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わけぎより細いあさつきもぬたに合う
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練り始めは味噌がはねるので大きめの鍋を使うべし
 ふろふきが八丁みそなら、酢味噌は京都の白みそで、色めも甘みも春らしい。さとうを足して酢でのばし、芥子を溶けばいいのだけれど、腰をいれてつくるなら、卵をいれて煮きあげる。一回につかうほどでは分量も手間も合わぬので、まとめてつくって冷蔵庫に入れておくとよい。

 小鍋に白味噌カップ1杯半とって、卵をひとつ溶いてまぜ、日本酒を大匙2ほど加えてゆるめ、弱火にかけて火が通ったら砂糖をカップに4分の1ほど加減しながらまぜてゆく。休まず練りあげ、しゃもじが立つほどかたくなったら火からおろして冷ませば味噌は一丁あがり。そんなに時間はかからない。使うぶんだけすり鉢に取り分けて、溶いた芥子をすりまぜ、米酢を足してどろっとするまでゆるめてあとは和えるだけ。

 あさつきやわけぎはさっと塩ゆでをして、食べよく小ぶりに切っておく。貝は赤貝、とり貝、青柳など、塩もみをして洗ったら、大きければ切り分けて、甘酢でさっと洗ってつかう。アサリなら、酒蒸しをして冷ます。ウドやワカメを入れてもわるくない。和えたらすぐに供するのが決まり。

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肴はもちろん、白いごはんのおかずにも
 わけぎと味噌は出会いもの、どうかすると貝よりもおいしほどだが、手に入らなければ葱でもいいし、ほかにも芽キャベツ、アスパラ、うるいなど、青みだけでつくっても、季節らしい一品になる。夏場だったらうすく切ったきゅうりの塩もみとワカメなんかでも。また貝の代わりに活きのいい鰯やイカなど、季節を限らずちょっとうれしい小鉢ができる。ぬたには案外たっぷり味噌をつかうので、やっぱり瓶に作っておけば、なにかにつけて重宝だ。






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