|
|
 |
和雑貨 翠 TOP
> 台処歳時記 目次 > 文月
 |
| 器も冷やして豆と黒蜜はたっぷりと |
梅雨に入って朝顔がぐんと伸び、紫陽花が涼しげに花を咲かせているけれど、関東では蒸し暑い日がつづく。そうめんがありがたくなる季節には、おやつもつるりと寒天なんか欲しくなる。水羊羹に牛乳カン、あんみつにところてん、近ごろぐっとお株の上がった寒天メニューも数あれど、夏いちばんに食べたくなるのは豆カンだ。
賽の目に切った寒天と、塩あじの赤えんどうに、黒蜜をたっぷりかけた豆カンは、江戸時代にはすでに広く親しまれていた日本の甘味。女コドモの大好きなあんみつよりはさっぱりとして、甘いものの苦手な男のひとにも案外よろこばれるようだ。
 |
| 煮るとほんのり磯の香のする棒寒天 |
 |
| 水でっじっくり2時間もどす 急ぐときはぬるま湯で |
さいきんは、もどさず使える粉寒天が巾をきかせているけれど、時間があれば、昔ながらの棒寒天を使いたい。磯の香りがほんのりとして、寒天と豆の旨みがモノをいう豆カンみたいな料理には、手をかける価値はある。たいていの食材は、なるたけ加工の少ない方が、面倒でも風味は勝るものらしい。千葉の海で寒天にする天草を採る海女さんは、海からあがって大鍋でぐつぐつ煮たのを食べるのが一番と言っていた。
棒寒天は、やわらかくなるまで2時間ほど水でもどして笊にあけ、一本につき水カップ3杯にちぎって入れて中火にかける。沸騰したら火を弱め、形がなくなるまで煮溶かすが、かき混ぜすぎると濁るので、あまりいじらずじっと待つ。すっかり溶けたら布巾か紙タオルを敷いた笊をつかって、水で濡
らしたバットなどに漉し流し、粗熱がとれたら冷蔵庫でよく冷やす。すこし経つと、室温でも縁のほうからしずしず固まる寒天の頼もしさ。溶けにくいので、夏場でもゼラチンより扱いやすい。
 |
| 塩味の豆は日持ちがしないので、たくさん炊いたら冷凍保存 |
赤えんどうは、前の晩によく洗って4倍くらいの水に浸けておき、ふくらんだらそのまま強火で沸騰させる。差し水をして再び沸いたら火を弱めて30分から1時間、豆の頭が水から出ぬよう時々のぞいてやわらかく炊きあげる。笊にあけ、熱湯をかけて渋を抜き、鍋にもどしてひたひたの水で煮立て、かるく塩で味をつけたら笊にあけて冷ましておく。豆はもどすと嵩が増えるので、一カップも炊けば4、5人前はまかなえる。
冷えた寒天を小さめの角に切って器に盛ったら、豆を好きなだけかけて、黒蜜をたっぷり添える。手間のわりに見た目も地味で、なんとも素っ気がないけれど、もぐもぐと噛むほどに、滋味というのかしみじみと涼をかんじる過不足のないおいしさだ。
|

このコラムのご感想やご意見など
にお寄せいただければ幸いです。 |
 |
|