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美術館へ行こう 柏市立砂川美術工芸館
 いま開かれている浜松の花博覧会では、静岡出身の型絵染の人間国宝、芹沢けい介の代表作のひとつ、州浜屏風のデザインが花壇に用いられているという。
 図案、型彫り、染付けに分かれるのがふつうである型染めの工程を一貫してみずから手がけ、型絵染という芸術をつくりあげた芹沢の作品は、全国3ヶ所の美術館でいつでも見ることができる。日本の伝統的な絵文字や文様、沖縄の紅型を取り入れた、あかるい色と明快なデザインは、いちど目にしたら忘れられない。ふるさと静岡の芹沢けい介美術館には、芹沢が世界各地で買い込んだめずらしい民芸品がたくさんあるし、仙台の福祉大学には、制作につかった型が多く残されている。そして質量ともにもっとも充実した芹沢作品を収蔵するのが、千葉県は柏市にある砂川美術館である。

 大正2年うまれの砂川七郎氏は、学生時代に芹沢の装丁した雑誌「工藝」に出会っていらい、小品からこつこつ揃え、蒐集のために事業を興して着物やのれん、屏風など、生涯かけて蒐めた品は640点にもおよぶ。一体が丈2メートルもある釈迦十大弟子尊像も、同名の棟方志功作品ともども当館に収められている。注文主であるインドのお寺に収まらなかった大作だ。

 昭和56年、自邸の敷地内につくられた砂川美術館は、平成7年、砂川氏の病気により一時閉館したものの、膨大な収集品は散逸をおそれて柏市に寄贈され、翌平成8年、建物はそのままに、市立として再開された。器とともに個人美術館から引き継がれた学芸員による企画展は毎年1、5、9月に替わり、作品と身辺の品々、肉筆画などテーマに沿って、素描から屏風まで、ゆたかなコレクションより選び出される。入り口ロビーの壁を飾るこれまでのポスターは、芹沢ならではの美しい色づかいが目をひく魅力的な企画ばかりだ。展示室の入り口にかかる「砂川美術工芸館」の看板は芹沢独特の型絵文字。作家と蒐集家との交流の深さがうかがえる。

 あそび心あふれる作風にふさわしく、建物の外観にも趣がある。国道にちかくビルのならぶ一画に、ひときわ色濃く繁る緑と、韓国風のちいさな搭が目印だ。武家式の門をくぐると、こぢんまりとした前庭がある。ツツジや紅葉の庭木はきれいに整い、館にいたる石畳の両側には、やはり韓国の家のかたちが珍しい灯籠や、ひと抱えもある大きな甕、入り口ではいかついシーザーがにらみをきかす。敷地の奥には御遺族の暮らす家と大谷石の蔵がある。砂川氏が理事を務めた東京駒場の民藝館によく似た親しみのあるどっしりとしたたたずまい。

 展示室は2階に分かれ、1階は芹沢の仕事をおおまかに辿る構成だ。型絵染の説明にはじまり、雑誌「工藝」や川端康成「雪国」など本の装丁、板の裏から色づけをするガラス絵、のれん、布や紙の額装や壁掛けなど。企画展にあわせて入れ替わることもある。ガラスケースの脇には立派な和箪笥や松本民藝家具の椅子、李朝の器などが並ぶ。

 2階はテーマに沿った作品があつめられ、今回は「着物と帯地」とうれしい企画。静岡の紺屋で染物を教わり、那覇の形附屋では紅型を学んだ芹沢の染めるきものは、伝統的な小紋や中形、紅型の技法をつかいながら、その枠をはみ出すような勢いのある文様が活きている。青地にあかい太陽文の木綿帯、からし色の乱れ格子が大胆な白地の紬に踊るきもの、茶の地に縄文様の紬の帯地など、30点ほどの作品は、いずれも古典的かつ新しい。芹沢が夢中になった紅型がもつ「堅固なその型、確かなその構成、華やかな色、楽しい配色、はれやかな持ち味、底にある深さ、静けさ」は、自身の作品にそのままそっくり当てはまる。

 目の醒めるような臙脂に白い大小の鯛が泳ぐ縮緬きものなどは、「僕の着物は着られない着物」という芹沢のことばどおりだが、小豆の地を白く抜いたところに青い柳が垂れる帯地や、白縮緬に赤い葉が散るポップな帯など、いちどでいいから身に付けてみたい、さわってみたいと思いをかきたてられるものもある。白地の芭蕉布にずばり芭蕉を描いたきものなど、たのしさもまた魅力のひとつ。色はもちろん紬、縮緬と選りすぐりの素材のよさは、オリジナルで見るうれしさだ。おなじ型で染めた作品も、染料や生地によって出来がすいぶん違うという。柄によっては筒袖で対(つい)丈の着物も多く、仕立て方もさまざまだ。

 1度に見られる作品数はけして多くはないけれど、うまい切り口で本物をじっくり見せる静かな工芸館である。上野から30分、季節ごとに足をのばして、芹沢のおおきな仕事にすこしずつ会いたい。




◆ひと目でわかる華やかな芹沢デザイン
◆ちいさな搭と丈たかい庭木が目印
◆前庭には沖縄、韓国の民芸品も
◆テーマも図案もそそられる
◆芹沢とくいの型絵文字
◆民芸家具と調和する一階展示
◆大胆きわまる芭蕉布の筒袖着物など

アクセス R常磐線柏駅西口下車、徒歩15分。または、東武バス「若芝循環」で「呼塚交差点」下車、徒歩1分
〒277-0005 柏市柏260
(TEL)04-7164-6413
http://www.city.kashiwa.chiba.jp/
柏市ホームページ「おすすめスポット」内


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