齊藤十郎さんの器を手にすると、その上に盛りつけたい料理のイメージがむくむくと浮かんできます。 ごちそうだけではなく、ふだんのおかずであっても、そのまま受けとめてくれる包容力。その気取りのなさ、懐の深さは、ご本人のお人柄にも重なります。
スリップウェア※という、思いのままにコントロールすることが難しい手法と出会ったことで、表現することの力みや自意識から解き放たれた、と語る十郎さん。まるでスリップそのものが意志をもっているかのように、文様が生まれてくる場面に立ち会えたときの感動は、今も忘れることができません。
淡々とよどみなく。表現者としての気負いのなさが、毎日使っても飽きのこない余白となって、使い手にも伝わるのでしょう。(もちろん、それは熟練の果てにたどり着いた境地だと思います) 象嵌や点打ちなど他の手法であっても、スタンスは同じ。作為のない可愛げがお料理と調和し、ひとつの景色を作り上げます。
時には量産品のサイズや形からも学んで、使い勝手を追求する、という真摯なものづくり。そこには、「用の美」を唱えた民藝の精神が息づいているように思えました。自我を手放した普遍性から生まれ出る、十郎さんののびやかな器。日々の食卓の上でこそ、その真価が発揮されることでしょう。
※スリップウェア ドロドロとしたクリーム状の化粧土(スリップ、泥漿)を流しながら文様を描き、焼き上げた陶器のこと。古くからヨーロッパ(特にイギリス)を中心に作られ、日本でも民藝の器として親しまれている。
※象嵌 土に文様を押し、凹んだところに異なる色の土を嵌め込んだ装飾技法のこと。
1969年生まれ。熊本の小代焼ふもと窯、鳥取の岩井窯で修行の後、岐阜県朝日村で独立。 その後、静岡県伊東市で窯を立ち上げ、現在に至る。
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